日本の味・旬の味。《7月・野菜編》

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焼く・煮る・揚げる・蒸す・炒める、そして漬物と、調理方法のバリエーション豊かな【なす】。なすは原産国をインドとし、日本には8世紀に中国経由で伝わってきたと考えられています。奈良時代の「正倉院文書」のなかにも、“藍国なす”が登場します。

なすの旬は、7~9月とされています。身体を冷やす作用にすぐれており、この時期にピッタリの野菜。なお「秋なすは嫁にくわすな」とここで言う秋は、旧暦のうえでの秋です。

「おたんこなす」「ぼけなす」など、人を悪くいう表現に使われる損な役回りも、それだけ身近な存在としてあったと考えられます。悪口に使われる一方で、縁起のいいものとしても数えられます。「一富士二鷹三なすび」がそれです。

初夢に見るとよいとされるものですが、これらが選ばれる理由のひとつに、
徳川家康が好んだものという説があります。
なす好きな家康のために、毎年4月になると初なすを献上する行列が
街を練り歩いたりしたこともあったとか。

 なすの分布を見ると、関東では関西に比べると小型な品種が好まれており、代表的な品種は鮮やかな濃紫色で卵形の「真黒なす」、関西を中心として長卵形なすが多く、西日本に長なす、大長なすが多く見られます。

かつては60品種ものなすが栽培されていましたが、栽培が簡単かつ見栄えのよい長卵型のなすの栽培が優先され、地方の特色豊かな品種は姿を消しつつあります。

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独立行政法人農畜産業振興機構「野菜図鑑」より

【個性ある地方のなす】
大長なす…長さが60cm前後にもなる、日本でもっとも長いなす。熊本鹿本地域で30年以上前から生産されており、気温が低いほど長く成長。
奥三河天狗なす…1本の伸長が25~30cm、重量400~1000gにもなるなす。愛知県奥三河で戦前から栽培されている。名前の通り、天狗の鼻状の奇形果が特徴。大きさの割には、皮は薄く、糖度は高くて水分の多いなす。
民田なす…山形県鶴岡市民田地方で江戸時代から栽培される丸なすの一種。その大きさは賀茂なすの1/20。松尾芭蕉が句に残したなすと知られる。漬け物の専用品種。
折戸なす…静岡県清水区三保・折戸地区で栽培されるなす。徳川家康が好んだと伝えられ、久能山東照宮にも奉納される幻のなす。促成栽培で作られ、毎年江戸の将軍家へ献上された記録が残されている。

Filed under: 食文化再発見の旅 — nakahashi 16:01
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