大人になってからの金閣寺

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修学旅行先が京都なら必ず行くであろう「金閣寺」。舎利殿ばかりに目を奪われがちになりますが、大人になってから金閣寺を見るならばもう少し視野を広げたいものです。

金閣を映す美しい鏡湖池をみわたすと鶴島、亀島など縁起のいい名前の島々が浮かびます。また、室町幕府の時代をときめいた権力者がこぞって岩を贈り、それぞれ細川石、畠山石、赤松石と名づけられ池に配置されています。

そもそも金閣は極楽浄土の世界観が凝縮されたものでした。
池から金閣を見あげれば阿弥陀如来像を拝め、池に映し出される2層の天井画、金閣の輝きを反射させた鶴島や亀島はそれぞれ金鶴、金亀となって輝き、舎利殿の金の鳳凰が池に舞う…

義満の時代はそんな眺めを楽しみつつ船遊びが催されていました。金閣の近くに配された夜泊石は、管弦や和歌を楽しんだ竜頭鶴首の船や酒船を停めるためのもの。月夜の下、いったいどんな宴が繰り広げられたのでしょうか。金閣の世界観を知ればこそ、いかに貴族絵巻の世界が贅沢の限りを尽くした優雅なものか思い浮かべられるでしょう。

なお、この庭園は池泉回遊式庭園です。このスタイルは大きな池を中心として周囲に園路を巡らせ、築山や池中に設けた小島、橋、名石などで各地の景勝などを再現。園路の所々には休憩所や展望所をおくのが一般的です。形式を知っておくことで他の庭園との見比べる楽しみがふえるというものです。

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梅小路蒸気機関車館

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青空にモクモクと煙を上げるのは、「D51」。ここ、京都市下京区にある梅小路蒸気機関車館は、蒸気機関車を重要な産業文化財とし、動態保存を目的とした日本唯一の施設。入館料とは別に乗車賃200円(こども100円)で、SLに乗ることができます。出発時の汽笛の大轟音にみなさんビックリしていました。

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歴代のSL機関車が扇形にズラリ。建物の左側の黒いのはスス汚れでしょうか…?展示されたSLの半数は運転台の中まであがることもできます。そのほか、広大なレイアウトを走るNゲージなど、各種模型や歴史を感じさせる展示品の数々は子供から大人まで楽しめる内容です。

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当時の乗務員日誌。文字から几帳面そうな性格が見てとれます。

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レトロな雰囲気を醸す施設の入り口は、旧二条駅舎を移築したもの。1904年に京都鉄道が本社社屋を兼ねて建設した日本現存最古の木造2階建和風駅舎。平安神宮を模して造られたそうです。

京都といえばついつい寺社のイメージが強いですが、こうした産業文化財も見逃せません。

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【特派員レポートVol.7】旭川発・気配りのできる椅子

9月8(火)~10(木)、表参道・Rin(東京都港区)にて開催された「旭川クラフト協議会見本市」を視察してきました。旭川クラフト協会加盟の各メーカーが出展、一堂に集められた木工製品たちの中で、興味深かったのは㈱匠工芸の椅子。単にきれいにデザインされた椅子ではなく、座る人にとっての細かな心配りが随所に見られました。

●玄関用の小椅子
脚に取り付けられた小さな台がポイント。靴を履くときなど、台に足を乗せれば深くかがまずに靴紐が結べる、手入れがしやすいというもの。台の出し入れも回転式だからとても簡単。ご年配の方には玄関にうってつけではないでしょうか。

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●「リビングア-ムチェア」
長い足もしっかり支える、前後にスライドする座面のシート。そして腰掛ける深さに合わせて調節できる革ベルトで背中のフィット感も優秀と、一度座ったら離れられなさそう…そんな思いでいると新聞や雑誌がすぐに取り出せるように、肘掛けに脇に小袋が付いているではありませんか。長時間快適に座れるためのとことんまでの気配り。なかなか心ニクいものです。

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●ロッキングチェア「ウッドペッカ-」
第17回北の生活産業デザインコンペティション銀賞受賞作品
これはなかなか美しいグッドデザインのロッキングチェアだなぁと見とれていたら、
なるほどフィンランドのデザイナ-による設計だそう。
しかもこのチェアのすばらしさは美しさ以上の機能性であり、感動モノでした。

まずロッキングチェアに必ずあるといっていい、ソリの邪魔な前後の出っぱりがない。
だから、家族が足を引っかける心配もない…というのはあくまでおまけの機能。
ソリの両端に取り付けられた何やら黒い三角形の物体、これが一番のミソなんです。

ぼんやりとリラックスしている時ほど、ハッと良いアイデアがひらめいたりするもの。
このチェアなら身体を起こし、デスクに向かってチェアの先端に座ればピタッと固定。
そのままふつうの椅子のようにデスクワ-クができるのです。
しばらくして頭が疲れたらそのまま後ろに体をチェアに預けてリラックス。体重が後ろにかかっても、ひっくり返らぬように後ろの三角形がストップしてくれます。デザインにとけこんだ力学を応用したこのアイディア。本当に驚かされました。
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さて、旭川は日本の家具6大産地のひとつ。
歴史を振り返ると明治23年旭川に木挽場をつくり、豊富にある自然の原木を加工して木材を、家や道具に生かそうとし始めたのが第一歩でした。やがて本格的な「町づくり」が始まり、全国から家具建具職人が移住、旭川で家や生活の道具を作る企業が増え、一大産地として発展しました。

しかしバブル崩壊以降、日本国内の家庭向け家具市場はほぼ一貫して縮小、旭川家具も主力であるタンスの販売数が低下していきます。重厚で大型の高級家具というイメージが人々の生活感覚とズレを生じさせてしまったのです。

危機感を覚えた旭川家具共同組合は平成2年、「国際家具デザインフェア旭川」を立ち上げました。家具のデザインこそ人々の生活を形づくり、社会を構成する文化であるという認識に立ち、その未来のビジョンを示す役割を旭川が担うという趣旨でした。3年に1回開催し、世界中からデザインを受け付け。応募作品の中から旭川家具として試作・製品化されるものもあり、その過程で旭川のメーカーも技術力と新しい発想を身につけることができるメリットもあったのです。

こうして新しい感覚を養うことで、旭川家具はそれまでのイメージを一新する家具を作り上げることに成功しました。そして平成16年にはイタリア・ミラノ、平成17~20年ドイツ・ケルンにおける家具の見本市に出品。そして平成20年には連続4度目の挑戦となるケルン・メッセで、過去最高の9000人以上が訪れ、各国との商談の成立に成功したほか、前年に出展した作品は、ドイツのインテリア誌の主宰する世界のインテリア50選に選ばれるなど着実に旭川家具の技術とデザインを世界に知らしめていったのです。

産地の特長として「デザイン性の追求」を掲げる旭川家具。良質な素材と高度な技術に、美しいデザインとすぐれた機能が加わってこそ、長く愛用できる家具になりえる。そんな思いから、作り手、地域が一体となって新たな挑戦をし続けています。

                            ものづくり研究所 主任研究員 荒木隆一

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