もの研特派員報告: 越後銘酒「久保田」のラベルのア―ト「かみのみぞ展」

「かみのみぞ展」が9月28日(水)~10月5日(水)、新潟県立近代美術館(長岡市)にて開催されました。

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これは、朝日酒造の銘酒「久保田」の、酒瓶のラベルが主役です。普通、酒瓶は呑み終われば、ラベルは剥がして捨ててしまいます。

でもよく見れば14×14.5cmの上質な和紙、捨てるにはもったいない。

しかも「久保田」のラベルは、「越後和紙」の手漉き「門出和紙」を使用しています。

捨てないで、この裏側に絵を描いたり、折り紙として使う事も出来そうです。

「久保田」大好き、ア-ト大好きという仲間が集まり、使い終わった「久保田」や「越州」のラベルの裏側に、自由なイメ―ジでア―トを描いたり、立体作品を作ったりして楽しむ、いわば「エコア-ト」です。

発案者の織物作家、岡嶋多紀さんが中心となり、画家やデザイナ-の仲間に声をかけて始まりました。発表は「かみのみぞ展」として、平成16年から始まり、これまでに岐阜初め、小川和紙と組んで埼玉伝統工芸会館、

今年7月には日本橋の小津和紙ギャラリ-で開催されました。

私は昨年秋、武蔵美の同級会で、旧友のグラフィックデザイナ-渡辺克巳さんと出逢い、朝日酒造の話をしたところ、「久保田のラベルを使ったア-ト作品を創っている。来年の秋、長岡の近代美術館で展覧会を開く」という話を聞きました。「私の故郷、長岡で開催する!」私は踊り上がって喜び「絶対見に行くよ!」と堅い約束をしました。

秋晴れの日、新潟県立近代美術館は、雄大な信濃川に架かる長岡大橋を渡った、広大な広場にある大きな美術館です。二階ギャラリ-は広い会場で、今回の出品作家は12名と、越後の和紙工房の作家9名と和紙の会です。

今回は、「越後の生紙と対話する、かみのみぞ展」のタイトル。「越後和紙」の工房の作家の方々ともコラボして、「越後和紙」の紹介や実演・実習も行うという、更に発展した展覧会です。出品作品の半分はラベルア―ト作品、半分は「越後和紙」を使ったア―ト作品。

「久保田」の和紙ラベル一枚。捨ててしまえばそれまでですが、裏側にア-トをする事で生まれ変わり、

素晴らしいア-ト作品が生まれ、更に「越後和紙」の創造的活動に発展していくという、壮大な構想と実践に心を打たれました。プロの作家の作品なので、充分に商品化出来るレベルです。又、エコの観点からみても、実に創造的な資源活用です。拍手!!

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★渡辺克巳さんの作品、和紙のグラフィクア-トや時計など。

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★岡嶋多紀さんの作品、和紙のランプシェ-ドやクッションなど。

生れ変る久保田のラベル涼新た

秋の水漉き上げられし越後和紙      荒木春雪子

主任研究員 荒木隆一

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もの研特派員報告: ギフトショ-にて見直した「風鈴」・「五徳」・「石州瓦」。

第72回東京インタ-ナショナル・ギフト・ショ-秋2011が、9月6日(火)~9日(金)までビッグサイトにて開催されました。

今回の出展社数は2,300社、4,000小間です。

東日本大震災・放射能の風評被害等で経済が沈下、停滞している今、今後の企業活動を再生復興の為、ギフトショ―の果たす役割は大きいものがあります。

多くの商品の中で、特に気に入った新商品を3点ご紹介します。

●日本の伝統的工芸品の特設会場にて、面白い風鈴に出会いました。

電子風鈴「りんでん」、(株)三和オ-トメ―ションの出品です。

風鈴といえば、丸い球形透明ガラスに金魚の絵、りんりんと鳴り…という情景。ただ昨今は家が隣接、うっかり風鈴も軒先に下げられない住宅環境もあります。風情の無い世の中ですね。

その点、この電子風鈴は、玄関の下駄箱の上とか、自分の机の上に置いておくと、人が近づいた時に、人感センサ―がキャッチして鳴り始めます。

「今日も一日、ご苦労さま」とでもいうような、優しい音色、これなら安心。しかも、タイマ―設定も出来ます。

風鈴の鐘の部分は有田焼。古伊万里柄から各種、藍・漆黒等、どれも深い味わいです。

風鈴を吊す台座は、落ち着いた胡桃木(くるみ)と和白木(わじろ)の2種類。

しかも、鐘の下に吊す短冊は、絵柄・歌・俳句等も各種あり、オリジナルで、自分の俳句や詩を書く事も出来ます。

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◆電子風鈴りんでん 青朝(朝顔) 50,000円(税込)写真右

◆電子風鈴りんでん 山吹(金)  80,000円(税込)写真中央

◆電子風鈴りんでん 伊万里(古伊万里) 70.000円(税込)写真左

風を使わないとすると「風鈴」と呼べないかもしれませんね。「電子鈴」でしょうか…。

●同特設会場で、もう一つ懐かしい火鉢の五徳に出会いました。

獅子吼・オリジナル五徳「三徳」、シンクSISIKUアドクライス(株)の出品です。

お話を伺うと「古くから使われてきた火鉢に着目、今まで目立つ事の無かった五徳にオリジナルデザインを施しました。鍛造職人の創業者が作った五徳を元に、モダンなデザイン感覚の「三徳」に作り直した新商品です。日本の伝統的な、三つ巴・三つ輪・雷雲などをモチ-フにデザインしてあります。

子供の頃お爺ちゃんが、火鉢に暖まっていた情景を想い出しました。

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◆三徳4,400円(税込)◆火鉢(木製)12,000円◆火箸・灰ならし各3,800円◆畳4,500円◆鉄瓶8,200円(参考価格)

●グルメ&ダイニングスタイルショ-の特設会場で、珍しい瓦に出会いました。

島根県石州の「直火用耐熱瓦」、石州瓦工業組合(亀屋窯業)の出品です。

瓦と言えば屋根瓦ですが、なんと「瓦の上で蕎麦を焼く」という趣向です。

私は「エッ!面白そうだけど、ザラザラして表面の粉が混じってきたないのでは…?」と思い、組合の方におたずねすると、「全く大丈夫、石州瓦は天然の釉薬を塗ってあり表面はツヤツヤ、とても頑丈で

熱で割れたりしません」という返事。

新建材の普及で、従来の屋根瓦の用途が激減、何とか新用途の開発をしなければという事で、今回新たに、会席料理用の小型直火瓦食器を開発したそうです。山口県下関市、瓦そばのたかせでは、この瓦そばを名物料理として人気になっているようです。私は、すたれゆく石州瓦の思いと共に、新規開発してグルメの世界に躍り出る石州瓦の、今後の発展を大いに期待したいものです。

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◆直火用耐熱瓦 5,250円(税込)

以上の気に入った3商品は、いずれも古来、日本の生活の中で息づいて育まれてきた日常の道具です。

新しい用途を考え、デザインを直す事によって、新しい生活の道具として生まれ変わってきます。その事の大切さを学びました。

主任研究員 荒木隆一

Filed under: なんだかんだ — hojo 21:01

もの研特派員報告: 群馬県地場産業「組子」の工芸品。

「ぐんま地場産業フェスタ2011」が、9月22日(水)・23日(木)ビエント高崎にて開催されました。

今回の出展社数は116社。今回3回目、大幅に出展社数が増え、どんな新しい群馬県産品に出会えるか、

期待して高崎に向かいました。

●木工の特設コ-ナ-で「組子」(くみこ)の洒落た工芸品に出会いました。

「組子」の行灯・ついたて等、群馬県建具組合連合会の各社の出品です。

そもそも「組子」とは、和室の障子の格子が元で、職人が技を競い合い、細く加工していった工芸品です。

主にヒノキやタモ材を用いて「行灯」・「ついたて」・「夏用障子戸」・「コ-スタ-」等を他種類制作しています。

本職は一般住宅の内装の障子や扉など、建具専門の職人の方々ですが、障子を組み立てる技を用いて、

それぞれに独創的な「組子」を商品として考えて制作しています。

又、自主的に「組子愛好会」を作り、技を競い合い、仲間同士でいろいろな「組子」の研究・試作もされているそうです。

更に、次の世代に続く若い人を育てる一環として、小学校で、生徒に「ついたてミニ障子」教室も開催しているというお話です。

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◆ピラミッド型スタンド 35,000円(税別)

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◆飾り組子(三ッ組手)  40,000円(税別)

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◆ミニ障子        3,500円(税別)

これらのお話を聞き、群馬県の地場産業としての「組子」の工芸品の、今後の展開がとても楽しみになりました。

細やかな組子の模様涼新た   荒木春雪子

主任研究員 荒木隆一

Filed under: なんだかんだ — hojo 20:55