日本の味・旬の味。《10月・野菜編》

e69fbf1

この時期になると店頭でよく見かける【かき】。
10月から11月にかけてもっとも多く出回ります。
店頭に限らず、柿の木になる実を見て秋を感じることはありませんか。

柿が大好きだったという俳人・歌人の正岡子規は、
「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」と五感に訴える、あまりにも有名な句を残しました。
松尾芭蕉も「里古(ふ)りて 柿の木持たぬ 家もなし」と詠んでいます。

ごく日常の風景の中でみられる柿は、大正時代まで日本でもっとも生産される果物だったそうです。また、現在でも日本から輸出される数少ない農産物のひとつでもあります。

柿は世界に1000品種以上あるそうですが、日本には中国から伝えられました。
「古事記」や「日本書紀」に登場するほどその歴史は古く、平安時代には干し柿に作られていたことが当時の法典「延喜式」に残されています。

柿は食べるだけでなく、実にさまざまな利用法があります。
乾燥させたヘタは、生薬としてしゃっくり・鎮咳・鎮吐に。柿の葉は茶葉として古くから民間療法に用いられてきたほか、殺菌効果から押し寿司を葉で巻いたり(柿の葉寿司)や、和菓子などの添え物に利用。柿の木は木質は堅く、家具などに利用されました。

柿渋に至っては耐水性を上げるものとして、和傘や団扇の紙、酒袋に利用されました。
現在では「柿渋染め」されたバッグなどが人気を集めています。
なお、柿は大別して甘柿・渋柿に分けられますが、
これは渋み成分「タンニン」の違いによるものです。渋柿は干し柿にすることで、
渋みが自然と抜けていくのです。

主な柿の種類
●富有…完全甘柿の代表品種。生産量は市場の半数以上を占める人気ナンバーワン。
ふっくらと丸みがあり、果肉はやわらかくて果汁も多く、甘みが強いのが特徴。
●平核無…「庄内柿」や「おけさ柿」とも呼ばれる種無しの不完全渋柿。
出荷時に渋抜きを行うことでまろやかで甘くなり、果汁も多くてやわらか。
●甲州百目…釣り鐘の形をした大きめの不完全渋柿。500g以上にもなる大物も。
渋抜きをして生食するほか、あんぽ柿や枯露(ころ)柿にも利用。
●次郎…背が低く四角張った円形をした完全甘柿。「富有」に次いで人気。
種はほどんどなく、果実はややかため。甘く歯触りの良い食感。
●筆柿…果形が筆の先の部分に似た不完全甘柿。大きさは80~130gくらいと
小ぶりで、やさしい甘みがあります。
●花御所…11月下旬頃から収穫される晩生の甘柿。見た目は富有に似ています。
果肉が緻密で果汁も多く、甘みが強いのが特徴。糖度が20度を超えるものも。

Filed under: 食文化再発見の旅 — nakahashi 10:11  Comments (0)

日本の味・旬の味。《9月・お魚編》

e38195e38293e381be

突然のように訪れた秋の気配。秋の魚といえばやはり【さんま】。
猛暑の影響による不漁から価格高騰が話題となったのは
まだ記憶に新しいところです。

さんまは季節回遊魚で、秋に突如現れるものではありません。
夏から秋にかけて北から南、冬から春にかけて北へと
大きな群れを作って移動しています。

特に北から南下を始める秋が脂が乗っておいしくなり、
一説には銚子沖に下りてくる10~11月の終漁期が
もっとも脂肪分が多いのだそう。

さんま漁業の歴史は約300年前までに遡り、
熊野灘がさんま漁の発祥地となります。
明治時代まで200年あまりは、旋網漁業に頼っていましたが、
現在は棒受網漁業によって漁が行なわれています。

一般的に魚は光に集まりますが、さんまは特にその習性が強く、
一度光に集まると大群をなして同一方向に海面の上層を旋回運動し、
容易には離れないそう。その習性を利用するため、さんま漁の漁船には
大きな照明装置が備えられています。

さんまは栄養価も高く、焼きさんま以外での調理方法を楽しみたいもの。
また、肝もおいしいので、新鮮な生さんまならぜひ肝までどうぞ。

社団法人全国さんま漁業協会のサイト内で
さんまの料理集がダウンロード可能です。http://www.samma.jp/

Filed under: 食文化再発見の旅 — nakahashi 15:54  Comments (0)

日本の味・旬の味。《9月・野菜編》

matutake3

秋の味覚の王者といえば香り高い【まつたけ】。
万葉集にも松茸が詠まれるほか、
吉田兼好は『徒然草』で鯉や雉と並ぶ三大珍味のひとつに挙げ、
花見でも知られる豊臣秀吉は松茸狩りも楽しんでいたようです。

しかしその松茸は市場の95%が外国産。
1941年の1万2000tをピークに、
近年は100トン前後にまで落ち込みました。

その減少の原因は、松茸と共生関係にあるアカマツ林の減少、
マツタケ山の老齢化が考えられるほか、
アカマツ林を手入れする人がいないためとも考えられています。
高度成長期には宅地やゴルフ場開発が行なわれ、
また、山村の生活様式の変化、輸入外材の増加などに伴う
林業従事者の流出という複数の原因が
マツタケの生産量の減少に追い討ちをかけているのです。

生活の変化や山の手入れの不備から生産量が落ち込む、という点で
春先の筍の運命に通じるものがあります。

なお、アカマツがあればどこにでも生えるというわけでもなく、
土質の条件も重なければ松茸は生えません。
そうしたこともあり、主な生産地も長野県、広島県、岡山県、岩手県、京都府
ついで兵庫県、岐阜県、山口県と偏りが生じます。

日本産は多く9月10月に出まわり、海外産は中国産が6月から10月まで、
アメリカ産やカナダ産は9月、10月を過ぎるとトルコやモロッコ産が登場します。

Filed under: 食文化再発見の旅 — nakahashi 14:29  Comments (0)