【特派員レポートVol.7】旭川発・気配りのできる椅子

9月8(火)~10(木)、表参道・Rin(東京都港区)にて開催された「旭川クラフト協議会見本市」を視察してきました。旭川クラフト協会加盟の各メーカーが出展、一堂に集められた木工製品たちの中で、興味深かったのは㈱匠工芸の椅子。単にきれいにデザインされた椅子ではなく、座る人にとっての細かな心配りが随所に見られました。

●玄関用の小椅子
脚に取り付けられた小さな台がポイント。靴を履くときなど、台に足を乗せれば深くかがまずに靴紐が結べる、手入れがしやすいというもの。台の出し入れも回転式だからとても簡単。ご年配の方には玄関にうってつけではないでしょうか。

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●「リビングア-ムチェア」
長い足もしっかり支える、前後にスライドする座面のシート。そして腰掛ける深さに合わせて調節できる革ベルトで背中のフィット感も優秀と、一度座ったら離れられなさそう…そんな思いでいると新聞や雑誌がすぐに取り出せるように、肘掛けに脇に小袋が付いているではありませんか。長時間快適に座れるためのとことんまでの気配り。なかなか心ニクいものです。

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●ロッキングチェア「ウッドペッカ-」
第17回北の生活産業デザインコンペティション銀賞受賞作品
これはなかなか美しいグッドデザインのロッキングチェアだなぁと見とれていたら、
なるほどフィンランドのデザイナ-による設計だそう。
しかもこのチェアのすばらしさは美しさ以上の機能性であり、感動モノでした。

まずロッキングチェアに必ずあるといっていい、ソリの邪魔な前後の出っぱりがない。
だから、家族が足を引っかける心配もない…というのはあくまでおまけの機能。
ソリの両端に取り付けられた何やら黒い三角形の物体、これが一番のミソなんです。

ぼんやりとリラックスしている時ほど、ハッと良いアイデアがひらめいたりするもの。
このチェアなら身体を起こし、デスクに向かってチェアの先端に座ればピタッと固定。
そのままふつうの椅子のようにデスクワ-クができるのです。
しばらくして頭が疲れたらそのまま後ろに体をチェアに預けてリラックス。体重が後ろにかかっても、ひっくり返らぬように後ろの三角形がストップしてくれます。デザインにとけこんだ力学を応用したこのアイディア。本当に驚かされました。
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さて、旭川は日本の家具6大産地のひとつ。
歴史を振り返ると明治23年旭川に木挽場をつくり、豊富にある自然の原木を加工して木材を、家や道具に生かそうとし始めたのが第一歩でした。やがて本格的な「町づくり」が始まり、全国から家具建具職人が移住、旭川で家や生活の道具を作る企業が増え、一大産地として発展しました。

しかしバブル崩壊以降、日本国内の家庭向け家具市場はほぼ一貫して縮小、旭川家具も主力であるタンスの販売数が低下していきます。重厚で大型の高級家具というイメージが人々の生活感覚とズレを生じさせてしまったのです。

危機感を覚えた旭川家具共同組合は平成2年、「国際家具デザインフェア旭川」を立ち上げました。家具のデザインこそ人々の生活を形づくり、社会を構成する文化であるという認識に立ち、その未来のビジョンを示す役割を旭川が担うという趣旨でした。3年に1回開催し、世界中からデザインを受け付け。応募作品の中から旭川家具として試作・製品化されるものもあり、その過程で旭川のメーカーも技術力と新しい発想を身につけることができるメリットもあったのです。

こうして新しい感覚を養うことで、旭川家具はそれまでのイメージを一新する家具を作り上げることに成功しました。そして平成16年にはイタリア・ミラノ、平成17~20年ドイツ・ケルンにおける家具の見本市に出品。そして平成20年には連続4度目の挑戦となるケルン・メッセで、過去最高の9000人以上が訪れ、各国との商談の成立に成功したほか、前年に出展した作品は、ドイツのインテリア誌の主宰する世界のインテリア50選に選ばれるなど着実に旭川家具の技術とデザインを世界に知らしめていったのです。

産地の特長として「デザイン性の追求」を掲げる旭川家具。良質な素材と高度な技術に、美しいデザインとすぐれた機能が加わってこそ、長く愛用できる家具になりえる。そんな思いから、作り手、地域が一体となって新たな挑戦をし続けています。

                            ものづくり研究所 主任研究員 荒木隆一

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【特派員レポートVol.6】夕張復活の立役者になれるか「石炭シュークリーム」

北海道夕張市。
この名を聞いて思い浮かべるのは何でしょうか。
かつての炭鉱の町、夕張メロン、大ヒット映画「幸福の黄色いハンカチ」(昭和52年・山田洋二監督)…といったところでしょう。
しかし最近では財政破綻というマイナスの話題ですっかり“おちぶれてしまった町”というイメージが拭えません。

そんな夕張市がいま「夕張がんばろうキャンペイン」を実施中。
とりわけ地元のお菓子メーカーが開発した「石炭シュ-クリ-ム」が話題なのです。

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なにせこの見た目のインパクト。黒く、ゴツゴツしてまさに石炭そのもの。
かたそうだし、一体、どんな味がするのだろう?と試食してみると…

それが「見た目と違い、クリ-ミ-でなかなかおいしい」んです。
どうやら炭坑時代の夕張の賑わいを取り戻す願いを込めて、石炭そのものを見た目に忠実に再現するために、竹炭を入れることでシューを黒くさせたのだそう。

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夕張が炭鉱の町として発展したのは明治初期までさかのぼります。しかし、昭和30年代以降エネルギ-革命が進行、平成2年にはすべての鉱山が閉山しました。
市では観光施設などを作り、観光客を呼ぼうとしたものの、近年の観光需要の下火で
観光客が来ない。そうこうするうちに平成19年財政破綻に陥ってしまった、というのがかいつまんだ歴史です。

今、再び夕張メロンが脚光を浴び実績を上げ、さらにはこうした現状になんとかしなくてはと危機感を感じ、町起こしに民間の食品会社が立ち上がりご当地グルメをいろいろと企画。その代表がこの「石炭シュ-クリ-ム」というわけなのです。すでにテレビでも取り上げられ、売り上げも絶好調。
日本おみやげアカデミ-賞、地域文化部門、最優秀賞受賞という花も添えられました。

しかしそれでも北海道発のお菓子とくれば、1位=花畑牧場生キャラメル 2位=じゃがポックル 3位=白い恋人 4位=ルタオのお菓子 5位ロイズ生チョコレ-トというのが定番です。
こうした甘くかわいい女の子ウケするものとはまるで正反対の、
男っぽさ全開の「石炭シュクリ-ム」に、ぜひ頑張ってほしいものです。

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夕張では、さらに「石炭カレ-」「石炭ラ-メン」「石炭飴」など石炭を中心にご当地土産として販売しています。かつてにぎわいを見せながら苦境に陥った夕張の復活こそ、
必ずや町おこしの目標になるに違いありません。
がんばれ!夕張!!

                             ものづくり研究所 特派員 荒木隆一

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【特派員レポートVol.5】一杯1,500円でも納得「有田焼カレ-」

不況にも負けず、元気なご当地B級グルメブーム。
カレーの人気ぶりも見逃せません。
たとえば、
●神奈川県横須賀市「よこすか海軍カレ-」
●新潟県長岡市「長岡野菜カレ-」
●石川県金沢市「金沢カレ-」
●茨城県土浦市「ツイッペリンカレ-」など、
ご当地の歴史やゆかりを織り交ぜながら、各地のカラーを出しています。

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そんな中、陶磁器の大産地である佐賀県・有田でも「有田焼カレ-」が
話題であるという情報をキャッチ。
佐賀県の有田・伊万里には昔、仕事で2回ほど訪れたことがあり、思い出のある土地柄です。そのうえ最近でもとある番組内で「全国47都道府県激うま駅弁ランキン」の1位に輝いたということで、これは見逃せません。
今回、都内の有名百貨店の催事で「大九州展」で販売されるということで、早速調査に行ってまいりました。

可愛い花柄の有田焼の鉢に盛られた焼きカレ-がいかにもおいしそう。
しかし価格を見るとひとつ1,500円也。高いなぁと思うものの、有田焼の鉢がセットであることを考えれば妥当な価格かもしれません。
それに器も二種類の柄から選べるのもうれしいところ。

そもそも焼カレーとは、昭和30年代の福岡県北九州市の門司港のある喫茶店から始まったのだそう。余ったカレ-を試しに、オ-ブンで焼いてみたところ、グラタン風の焼き上がりで香ばしく美味しい味だったので、早速メニュ-にのせたところ、大好評になったといわれています。

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さて気になる有田焼カレーのお味はというと…
「焼きカレ-」なので、鉢についた焦げめが香ばしく、
真ん中にはとろけたチ-ズがたっぷりと濃厚でコクの深い味わいです。
しかも28種類ものスパイス入りとパンチがしっかり効いています。

素材を見ると国産タマネギや地元の鳥肉・牛肉を使用。すね肉を一週間じっくり煮込
んでいるそう。お米は佐賀の棚田米を使用と、地元の素材同士がハーモニーしていました。ちなみに辛さは中辛一種類のみ。

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地元では、有田町の「創ギャラリ-おおた」の本店や、
もちろんJR有田駅の売店でも販売されています。
最近では東京の目黒にも出店と、その人気ぶりがうかがえます。

ほかに陶器を用いたご当地グルメのバリエーションが増えないかなと期待しつつ、
「有田焼カレー」が有田の町起こしのために、観光資源のために役立って欲しいものだと思います。

                             ものづくり研究所 特派員 荒木隆一

Filed under: 特派員レポート — nakahashi 13:33  Comments (0)