【特派員レポートVol10】人生を変える十七文字「俳句」の魅力

卆寿とは御年九十歳のことを言います。
私の前職場である通販会社の監査役である丸山勝さんが、最近、卆寿句集として「安曇野」を上刷。国立国会図書館をはじめ、大手新聞社・俳人協会などにも寄贈されました。

依頼を受けたときはまさか表紙用とは思ってもみませんでしたが、
私の創作活動のひとつである切り絵(Vol4を参照)を表紙に使っていただき、たいへん感激したものです。

e794bbe5838fe38080e58fa5e99b86e5ae89e69b87e9878e_001

「安曇野の五月。茅葺きの農家が見え、田には早苗が風に吹かれている。残雪の
常念岳が田面に映り込んでいる風景」
私も安曇野には旅で訪れ、アルプスと田園風景に感動した縁があります。
それと丸山さんへ日ごろの感謝の気持ちを込めて表現しました。

句集には丸山さんの感性があますことなく表現されています。
・梓川穂高も晴れて猫柳        勝
・今日も生き明日も生きよと草青む   勝
・少年の夢育ちゆく青嵐        勝

丸山さんは安曇野育ち。小学生の時分に俳人の先生から俳句を教わって誉められて以来、俳句を人生の心の友として詠み続けてこられました。
大人になってからは飯田龍太先生の句会にもご夫婦で参加されたほか、
多忙な会社の実務の合間には、有志の社員を集め「俳句昼食会」を開いては、
後輩の指導にあたられました。私も教えを受けた一人です。

俳句は五・七・五に身近な自然の風物を詠みながら、そこに自分の気持ちを託す文芸。
人の俳句を読んだり、自分で詠んだりすると、おのずと気持ちが静まり癒されるものです。e794bbe5838fe38080e58fa5e99b86e5ae89e69b87e9878e_002
最近では従来の俳句のスタイルを超えて、デジカメ写真で撮影して写真俳句を作ったり、
パソコンでネット句会など、手軽に俳句に触れる機会がずいぶんと増えたのではないでしょうか。俳句のように、日本語の持つ奥深さや美しさを再発見できる機会が増えるのは、たいへん喜ばしいことです。

俳句人口は国内に一千万人いるとされ、実際にNHK全国俳句大会には、
毎年大人からは五万句、ジュニアから四万句も投句されるそうです。
近年では海外でも「HAIKU」人気が高まり、英語で読む俳句も珍しくなくなりました。

メモ帳とボ-ルペンがあれば十分。ポケットにしのばせれば、ひとたび俳句の世界に飛び立せます。私の場合、日中の散歩時にひらめきを書き留め、夜家族が寝しずまってからまとめています。

俳句には常に新しい発見があります。
句会で人から刺激を受けたり、季語を調べることで、歴史や古語を学んだり、
新しい自分が開かれてゆくのを実感できます。

そんな素敵な俳句の世界に導いていただいた、丸山さんにはひたすら感謝です。

                           ものづくり研究所 主任研究員 荒木隆一

Filed under: 特派員レポート — nakahashi 10:00  Comments (0)

【特派員レポートVol.9】「黄金の焼き海苔」

年賀はがきの発売が始まり、もう年末かと思うこのごろです。
さて、めでたいお正月にふさわしいひとつに、金がありますが、面白い技術をもった企業があるので今回はそちらを紹介しましょう。

それは先日ビッグサイトで開催された「真空展」で出会ったアルバックヒュ-マンリレ-ションズ㈱さん。本来は真空蒸着する機械の製造業なのですが、新しい用途開発の一例として、試作してみたというのがこの「黄金の焼き海苔」。

e794bbe5838fe38080e9bb84e98791e784bce3818de6b5b7e88b94_0081

なんと焼き海苔の片面が全部金箔状に覆われてなんともゴージャスな海苔なのです。
家紋が大きく入り金色に輝いている海苔、黄金の海苔巻きなど、見ているだけでなんだかおめでたい気分になってくるから不思議。

私は以前金沢での商談会で金箔会社の金箔を作る作業を見学したことがあり、はじめ見たときはこれも金箔を貼り合わせたものかと思いました。しかし貼り合わせ具合がどうも見事で、滑らかさが違うと思っていたら…
やはりそこが真空蒸着の力。クリ-ンな真空中で焼き海苔の片面に金箔と同じように純金を吹き付けて作るのだそう。

そもそも真空蒸着処理は、医薬品やレトルト食品、スナック菓子といった包装材料の内面に利用されている薄膜処理技術。それゆえ衛生面で問題はまったくなく、この「黄金の焼きのり」も通常の食品用焼き海苔として食べることができます。

e794bbe5838fe38080e9bb84e98791e784bce3818de6b5b7e88b94_0041

たいてい金を食品に使うとすれば、金箔の細かくしたものを正月用の日本酒や料理のトッピングなどに使っていたりするくらい。これほどまでに大きく見事に使ったものは見たことがなく、実にインパクトがありました。

たとえば新年のごちそう、還暦の祝いの御膳、宴会料理に使って友人をビックリさせる、結婚式・入学式などの縁起もの…こんな時に黄金シリーズがあったらいいなと、楽しい場面がいろいろ思い浮かんだものです。いっそタイムマシンに乗って、黄金が大好きだった太閤秀吉に、この黄金焼き海苔を献上したら、さぞ喜ばれるだろう、出世できたかもしれませんね。

ものづくり研究所 主任研究員 荒木隆一

Filed under: 特派員レポート — nakahashi 15:42  Comments (0)

【特派員レポートVol.8】不思議な「魔鏡」

秋のギフトショーと話はちょっと前にさかのぼります。
今年も盛大に開かれ、出展社数も約2,500社ありました。今回は、せっかく面白いのにまだ日の目を見ない、珍しいものを探すのがテーマ。まさに宝探しに近い感覚です。

会場も広いので、歩き回ると本当に棒のようになります。
でもお宝に出会った瞬間に、ワクワク感で疲れも吹き飛んでしまうんですよ。

それでは今回出会ったお宝のひとつをご紹介しましょう。

みなさん、不思議な「魔鏡」をご存じですか?
「魔鏡」とは、一見すると普通の丸形の鏡なんですが、これに太陽などの光を反射させると、映った画面に絵や文字などが、薄くボンヤリと妖しげに現れてくるのです。

e794bbe5838fe9ad94e98fa1_003

私自身はすでに上野の東京博物館特別展示の巨大な「魔鏡」を見学したことはあるのですが、改めて何も描かれていない魔境から映し出される絵や文字に、…アラマァ。なんで?どうして?と不思議さで口がポッカリ空いてしまいました。

タネを明かしてしまうと、鏡の面に、肉眼ではわからない微細な凹凸があります。
丁度平面鏡の中に、絵や文字として凹面鏡や凸面鏡が組み込まれており、これが光に当たると凸面の部分は光が散乱して影になり、凹面の部分は収束して光のような画像になるというわけです。…わかりましたか?

魔境の正確な歴史はわかりませんが、中国から伝来したものです。日本では神社や寺院の仏具として青銅鏡が使われてきました。硝子の魔鏡が制作されたのは、江戸時代後期から。なお、隠れキリシタンは魔境の技術を応用した「隠れ切支丹鏡」を用いてキリスト教の十字架やマリア像などを浮かび上がらせて崇拝していました。

今回、ギフトショ-の出展は、制作グル-プ「影見工房」代表(有)コウノの出品。
影見工房の制作技術者、大澤さん(写真)に話を伺うと「北斎の絵ぐらいまで細かく彫刻出来るんですよ」とのこと。アイデアによっては、相当面白いものが作れるようです。

ちなみに携帯ストラップに付ける可愛い鏡が展示されていました。
さて、どんな絵や文字を浮かび上がらせれば面白いだろう?

e794bbe5838fe9ad94e98fa1_002

形としては置いておけないが、映像としては欲しい…
そんな思いに一番あてはまったのが、昔でいえば、「隠れ切支丹鏡」だったのかもしれません。ならば今の時代には?と考えると、日本の「狭い住宅事情」にヒントがあるのでしょうか…

しかしブ-スでは「魔鏡」と書いてあっても、知らない人は素通り。知っている
人だけがこのブ-スに立ち寄っているだけと。ちょっともったいない気がしました。
魔鏡で宣伝するなど、ひと工夫すると面白かったかもしれません。

ものづくり研究所 主任研究員 荒木隆一

Filed under: 特派員レポート — nakahashi 10:17  Comments (0)