もの研特派員報告「長崎・龍馬饅頭」
中が、がらんどうの饅頭
風薫る五月、小田急百貨店新宿店にて「福岡・長崎の物産展」が開かれました。
注目したのは饅頭を売る長崎の「茂木一○香本家」(もぎいちまるこうほんけ)。
袋には「龍馬が食べたかも知れない饅頭」と書かれてあり、興味を引きます。
今年は大河ブームにあやかり、どこでも「坂本龍馬」。駅弁や土産用のお菓子、日本酒があちこちでみられます。
しかもそのお饅頭、どうも変わったお饅頭のようなのです。販売員の方から、「昔の復刻版だよ、しかも中はがらんどうだよ!」と崩した饅頭のかけらを差し出され食べてみると…センベイのような硬い感触。しかも二つに割ってある饅頭をみると、中は全くのがらんどう、あんこが入っていないのです。
「なんで、がらんどう?!」と不思議さでいっぱい。
饅頭の皮の内側には、黒蜜がたっぷり塗ってあります。割ってくずして食べてみると、硬めの皮と黒蜜の甘い味、なかなか美味しいコシのある焼き菓子です。
説明によれば、坂本龍馬は1864年に長崎に来崎。長崎茂木町出身の芸者お元の所へ、よく龍馬は遊びに来て二人で過ごしてくつろいだそう。この饅頭は、当時の長崎名物であったので、お元と共に龍馬も食べたであろう、という話が伝わっています。
この饅頭自体が江戸中期、中国の禅僧より伝えられたもので、中が空洞なのを特徴とする焼き菓子だったのです。茂木一○香本家は1844年創業で、幕末の時代に長崎で流行っていた饅頭の復刻版を作った、という訳です。
「昔の歯固めになりそうな珍しい饅頭を、よくぞ復刻版で作ったものだ」と関心しました。
気になるお値段は、5個入りで400円也。
長崎の龍馬のまんじゅう若葉風 荒木春雪子
主任研究員 荒木隆一