● もの研特派員報告 にっぽんの伝統神事を守ろう「夏越の祓」
6月30日(木)、東京都の西武新宿線、沼袋駅近くの氷川神社に於いて
「夏越の祓」(なごしのはらえ)の神事が行われ、初めて行ってきました。
私は趣味で俳句を多少嗜んでいますが、この「夏越の祓」に関心を抱いたのは、
俳句の夏の兼題で「夏越の祓」という季語に出会ったからです。
知識がなく、歳時記を読み、ようやく神社で行う6月末の除災神事という事を知りました。
それによると、大晦日が新年を迎えるための大切な日であったのとおなじように、
六月晦日も、神に年の前半のあいだの無事を感謝し、収穫までの後半年の無事を祈るための
物忌みの日、祓いの日と考えられたのです。昔、宮廷では十二月晦日と六月晦日の年二回、
「大祓い」の神事が行われていたそうで、十二月を「年越し」と呼ぶのに対し、
六月のほうを「名越し」と呼んだそうです。なるほどなるほど…。
関連季語で「茅の輪」(ちのわ)とか「形代」(かたしろ)という言葉も載っていますが、
これもサッパリ意味が解らず、この神事に参加して意味がわかりました。
さて、氷川神社は、スサノオ大神を奉った神社です。立派な雅楽堂の舞台や、
七福神巡りの石像も並び、なかなか見応えのある大きな神社です。
社務所でお尋ねすると、神事は夕方の5時からとの事。
「夏越の祓」に参加する事を申し込み、寸志を差し出すと、氏子崇敬者として
認められ形代(かたしろ)を授与されました。人の形をした和紙です。
形代は神主などが祓(はら)えや祈祷(きとう)のとき、人間の身代わりとした人形
で、これに罪・けがれ・災いなどを移して祓えをするようです。
ひな人形も、もとはこの一種だとか。
この形代に、家族の名前・年齢を書き、祈念を込めて息を3回吹きかけ、
その形代で体の悪い所をなでたり、半年の心身の罪やけがれを形代に移します。
この形代を大祓の日、神社に渡してお願いします。神社からは「茅の輪の御守り」
と「御供物」を頂きます。
夕立が止んで、定刻5時には、すでに境内には近所の方や、
沼袋商店街の方々が、数百人列んでいました。
やがて神主様が並び、厳かに神事が始まりました。
神主様から参拝者全員、 おごそかにお祓いを受け、お祓いの後、
参拝者全員が行列して、いよいよ「茅の輪くぐり」大きな「茅の輪」を3回、8の字に廻ります。
夕立の雨に濡れて、わらの太い「茅の輪」は、しっとりと濡れて重々しい感じでした。
集まった氏子崇敬者の、半年の罪の重みをそのまま受け止めたかのように見えま
した。次回の大祓は12月30日「年越の祓」が行われます。
私は、このような神事が日本各地、古来より住民に息づき、伝承されている事を見て
「これぞ、にっぽんを残そう!」だと、感動を新たにしました。
雨ふくむ重き茅の輪をくぐりけり 荒木春雪子
主任研究員 荒木隆一