【特派員レポートVol.2】ロケット先生が甦らせる幕末浪漫。
東京・表参道(渋谷区)に全国から選びぬかれたグッドデザインの
伝統的工芸品のアンテナショップ「Rin」があります。
こちらでは定期的な企画展示が催されており、今回は「萩ガラス」を視察してきました。
「萩ガラス」は幕末の長州・萩の志士たちが愛用していたこともあり、
萩焼と並んで有名であり、人気も高い伝統工芸品です。
ショップに入るなり、おやじさんがフレンドリーにこう解説してくれました。
「萩はガラスは非常に固いガラスでね、普通のガラスの10倍の強度があるんです。
だから、ほとんどホテルやレストランなどでの業務用に使われているんですよ」
確かに繊細すぎても業務に差支えが起こるでしょうから。
伝統産業がこうして近代の産業を支えるということは実に素晴らしいことです。
そういえばおやじさん、萩ガラスとはどんな関係が…?
たいへん失礼いたしました。
藤田氏は学生時代からロケットの打ち上げ実験を試みるなど
宇宙と共に過ごしてきたような人生。
それにしてもロケットと萩ガラスの関係が不思議です。
たずねてみると高温でも溶けにくいセラミックを使った人工衛星のノズルを
研究設計するうちに、1500度の高温で焼く萩ガラスに出会い、深い関心を
持ったことから始まったそうです。
さて、冒頭でも萩ガラスが幕末の長州・萩の志士たちに
愛用されていたと述べましたが、今回の企画展示では
あの高杉晋作が愛用したグラスを再現した復刻品に出会いました。
藤田氏は、長州の大元、萩の町にゆかりある歴史上の有名人が
使ったグラスを、ぜひ再現したいと思い立ち、実物が所蔵される
山口県立博物館に日参、約5年かけて交渉した思いのこめられた一品です。
いうまでもなく高杉晋作は、江戸末期に活躍した幕末の尊王倒幕志士。
奇兵隊などの諸隊を創設、長州藩を倒幕に方向付けた立役者として
彼なしに幕末を語ることはできません。
胸にどんな思いを秘め、志士たちとは何を語りながら飲み交わしたのでしょうか。
このグラスで冷酒やワインなど傾けながら、高杉晋作の往事の夢を
想像するのも一興です。
ものづくり研究所 特派員 荒木隆一